「水」戦争の世紀 ISBN:4087202186

 水の問題については何かしら読んどかないとな、と思っていたところ手ごろな新書が出ていたので買ってみました。著者はカナダの人で、前回読んだ『暗黒大陸の悪霊』とはカナダつながりの読書になります(笑)。
 で、内容ですが。まず、飲用可能な淡水が「青い黄金」と呼ばれるほど貴重な資源になりつつあり、それをビジネスチャンスとして利用しようとする大企業の水道王たちがいる一方、地球上の貧しい地域ではまともな水にすらありつけない人々が多数存在するという、生存に不可欠な水を巡る不均衡な状態が提示されています。そしてこの傾向が進むと非常にまずいことになるだろうというのが著者たちの主張です。ムゥフーン。確かに、事例を見る限り、水道を民営化などした日にはろくなことがないのはどうやら確からしい。知らんことが多かったのでふんふんと感心しながら読み終えたのですが、義憤に燃える環境活動家がどれほど危険なアホになり得るかを知っている日本人としてはあまり煽られる気にもならず。興味深い問題ではあるので、他の視点からの意見も読んでみたくはあります(まだ読んでないんですが、『環境危機をあおってはいけない』とかだとどんな風に扱われてるのかしら)。でもまあ、例えばコンビニでミネラルウォーターを購入するとき、その水がどこか第三世界の貧しい地域において、水企業によって買い叩かれた帯水層から汲み上げられたものかもしれず、井戸の枯渇や地盤沈下や環境悪化で地域に害を及ぼす原因になっているのかもしれんなあ、とかいう認識は持っててもいいかもね。あとこの本は「コモンズ」という語(訳語)を特に詳しい説明もなく使っていて、ちょっとびっくりしました。「コモンズとしての水」は著者たちの主張の立脚点となる概念なのに、そこで何の説明もなくても大丈夫なのかな。読者のレベルを高く見積もってるのかな。それならそれで、そういう姿勢は嫌いではありませんが。でもおらあ、レベルの低い読者なので不安だよ(笑)。