DayZプレイ記録#2:ザ・レイルウェイ・マン
夜の海岸で目を覚ました。
ばつの悪い思いをしながら頭を振る。
…………まさか閉まった扉を勝手に抜けるとは思わなかった。
雨は降り続けている。同じ過ちは繰り返すまい。身体が冷える前に動こうと立ち上がった。
少し歩くと線路に出た。レールを辿っていけば街に着くだろうと考え、左に足を進めた。
読みは当たって、すぐに小さな集落が見えてきた。家々の間をゾンビたちがふらふらとさまよい歩いている。
まずいな、さっさと屋内に逃げ込もう――と思ったそのとき、ライトが投げかける小さな光の輪の中に、すごい勢いで駆け寄ってくるゾンビの姿が飛び込んできた。
「グワーーーーッ!!」
「うわあああーーーーっ!!」
慌てふためいて踵を返した。
線路伝いに逃げていくと、物陰からどんどんゾンビが寄ってくる。背後に入り乱れる足音は数える気にもならないほどだ。
集落をあとにして走り続け、涸れた川にかかった小さな鉄橋を渡り、野原の真ん中でおそるおそる振り返ると、最後まで追いかけてきたゾンビが私を見失ったのか、所在なげに橋の上でよろめいているのが見えた。
膝に手をついて息を整える。
振り切れたのが信じられなかった。疲れも知らずあんなに全力疾走できる奴らなのに。
もう一度あの集落へ戻る気にはとてもなれない。次の街はもう少し状況がマシであることを期待して、このまま線路を辿り続けることにした。
真っ暗だった空が徐々に明るくなってきたが、見渡す限り分厚い雲に覆われて、どちらが日の出の方角かも判然としない。
辺獄めいた灰色の光がぼんやりと地上を照らし、陰々滅々としたアポカリプティック・サウンドがどこからともなく響き渡る。
生きた人間はおろかゾンビの影すら見えない色褪せた草原を、錆びた廃線に沿って延々と歩き続けていると、自分は本当に生きているのだろうか、実は既に死んでいることに気付かず死者の国を彷徨っているのではないか――という思いが浮かんでくる。
いや、実際さっき一回死んだけど、そういうアレではなく。
森の中から現れた舗装道路が、線路の隣に並んだときにはほっとした。街が近いに違いない。元気を取り戻して、並行する線路と道路に沿って足を速めた。
行く手になだらかな傾斜で伸び上がる山肌が見えた。
線路と道路は、山を前にして唐突に切れていた。
え?
あれ?
ぽかんと口を開けて、足許で中断した線路を見下ろす。
線路を辿れば街に出るってDayZ @ wikiに書いてあったのに。
街ないじゃん。
山じゃん。
荒野にただ一人立ち尽くす私の頭上で、鐘の音のようなアポカリプティック・サウンドがごぉんごぉんと鳴り続けていた。