斬首人の復讐

斬首人の復讐 (文春文庫)

斬首人の復讐 (文春文庫)

 はいはいスレイドスレイド。カナダの血みどろ京極夏彦マイケル・スレイドの新しい本ですよー。今回はデビュー作『ヘッドハンター』の直系の続編。ヘッドハンターを読んでない人にはフーダニットだけど、読んでる人にはハウダニットなお話になっております。おれはヘッドハンター読んだのがはるか昔なので、誰が犯人だったかすっかり忘れてたがな! おかげで二倍楽しめたぜ! ハハハハ!(さすがに途中で思い出したけど)
 さて、今回も毎度の如く、猟奇殺人鬼が騎馬警察をひどい目にあわせるわけですが、ヘッドハンターの存在が濃い影を落としている今作は、すごい勢いで首が飛びます。ええ、紛うことなき首ちょんぱミステリです。<斬首人>(ヘッドハンター)と<刎刑吏>(デキャピテイター)、二人の殺人鬼が、広いカナダを股にかけて、ちょんぱちょんぱまたちょんぱ。雪深い森の中の小屋を、目と口を縫い閉じられたツァンツァ(干し首)が取り囲むという表紙からも、本書のやる気を感じることができるでしょう。
 珍しく海外に出ることなく、終始カナダ国内で話が展開する今作では、カナダの歴史の闇に焦点が当てられます。それは白人の苛烈な支配を受けたネイティブ・カナディアンの問題です。事件の発端となるのは、武装して山中に立てこもった終末思想のネイティブ・カナディアン過激派との戦闘ですし、捜査の進む中で明らかになる、先住民学校における忌まわしい過去は言葉を失うほどのものです。教会によって自らの文化をずたずたに引き裂かれた彼らの怨嗟は、事件の背景にも複雑な形で絡んでくることになります。
 今回ふたたび主人公を務めるのは騎馬警察特別対外課(スペシャルX)指揮官、ロバート・ディクラーク。ヘッドハンター事件でどん底まで叩き落とされたディクラークがこれ以上どんな辛酸を舐めるのか、読者は終始ハラハラしっぱなしです。というわけで未読の人は、*絶対に*『ヘッドハンター』から読むべし。『斬首人の復讐』を読んだ後では『ヘッドハンター』のフーダニットが楽しめません。
ヘッド・ハンター 上 (創元推理文庫)

ヘッド・ハンター 上 (創元推理文庫)

ヘッドハンター 下 (創元推理文庫)

ヘッドハンター 下 (創元推理文庫)

 主人公以外のレギュラーでは<狂犬>(マッド・ドッグ)エド・ラビドウスキィと、自身ネイティブである<幽霊番人>(ゴースト・キーパー)ボブ・ジョージの二人が男を上げてます。かっこいいぜ。