"The Hyena People of Nigeria"翻訳
20日に紹介した、ハイエナを連れたナイジェリアの旅芸人一座の記事(→元記事)。読んでみたらあまりにも高いファンタジー濃度に鼻血を噴いた。読め! 読め! あ、適当訳なので間違いの指摘などありましたらよろしくお願いします。
アデトクンボ・アビオラ記す
2005年2月アブドゥラヒ・アマドゥが、ナイジェリアはカツィナ州の小さな町ムルムパシで、父親の仕事に参加したのは15歳のときだった。父と同じ道を歩むために、彼は自分のハイエナを手に入れなければならなかった。ハイエナや蛇や猿を供に連れた芸人として、あるいはナイジェリアで人気のある呪物や薬草の商人として、彼の家族は日々の糧を得てきたのだ。
ナイジェリア中央部から北部の諸州――バウチ、ヨーラ、プラトー、タラバなど――のブッシュや洞窟への行き方を彼は学んだ。ハイエナのねぐらへ続く暗いトンネルの入り口で、アブドゥラヒとその仲間は、動物を意識不明にする、伝統的な粉末状の麻酔薬を吹き込んでやる。
次に彼らは、強力な電灯を用意して穴の中に入り込み、昏倒した動物を外へと引きずり出す。時には光が強すぎて電球が切れることもあるが、アブドゥラヒは自分のやり方を通している。
「ハイエナなどの危険な獣の狩りを成功させるために、我々はさまざまな呪物や護符や麻酔薬で武装する。ハイエナの巣穴を嗅ぎ当てるためには猟犬も使う」32歳のアブドゥラヒはそう語る。
アブドゥラヒはナイジェリア中を行き来する芸人一座の一員だ。メンバーは10人、プラス3匹のハイエナ、2匹のニシキヘビ、4匹の猿。2005年2月現在、彼らはナイジェリアの首都アブジャの郊外、デイ・デイ・ジャンクションに建つ、三つの寝室を持つおんぼろアパートに居を定めている。動物たちは特製の箱の中に住んでいる。
彼らは一人残らず、顔にも手足にも傷を負っている。動物たちが突然敵意をむき出しにして調教師に飛び掛かってきたときの爪牙の痕だ。
「ハイエナたちの行儀が悪いときは、重い棍棒を使う」アブドゥラヒは言う。「頭をぶん殴って、地面に叩き伏せる。我々は皆、動物が攻撃的になったときに備えて棍棒を携帯しているよ」
しかし、調教師のうちの一人、「マミー」アブドゥラヒは若干6歳だ。彼女はアブドゥラヒの娘で、なんの恐怖も見せずに動物たちと戯れる。ハイエナをポニーのように乗りこなしさえする。
「あの子が傷つけられることはない」アブドゥラヒは言う。「相手が蛇でも猿でも同じことだ。あの子は秘伝の薬液を飲み、薬液で湯浴みしている。だからあの子は、これからの一生、獣に対して護られている」
ハイエナの調教師のほとんどが(山羊や牛など、ほかの動物の場合も同様だが)、捕らえた獣を調教する際、お互いの信頼関係の構築と並行して、魔法、ヴードゥーの薬草、ジュジュの煎じ薬、粉薬、護符、秘伝の呪文などを使っている。調教師たちはまた、人間もハイエナのような獣に変身できると信じており、自らを害悪から護るための強力なヴードゥーのお守りや呪文を必要としている。そして、しばしば――特に定刻どおりに餌をもらっていないときに――凶暴化するハイエナに対して、お守りや護符は、棍棒のバックアップとして用いられている。
お守りや護符は、調教師が踊りの技術を強化するために足首に嵌める金属の輪、「アカヤウ」にも取り付けられる。一座の要であるドラマーたち――ヌラ・ガルバ、アブドゥルカリム・ラワル、サヌーシ・アハメドもこれを身に着けている。しかし、アブドゥラヒによると、動物の面倒を見る仕事は、彼の家族が伝統的に独占しているのだという。家族以外の者が一座に加わることはないし、生き物を捕らえて世話をする秘伝の方法を教えられることも決してない。
動物たちは金を生む。一座は何年も伝統の秘薬やお守りを売り歩いてきたが、ハイエナや他の動物たちを手に入れて以来、取引の量は劇的に増加した。「動物たちと通りをパレードするんだ」マイナサラと名づけられた13歳のハイエナの飼い主、マラム・マンテリは言う。「彼らが滑稽に振舞うと、見物人がお金の雨を降らせてくれる」
ジャミスと名づけられたハイエナを飼うガラディマ・アーマドゥは、調教師は「バンテ」ドレスを着てお守りを身に着ける、と説明する。「見物人にお守りを与えると、彼らは傷つけられることなく動物と遊ぶことができる」と彼は言う。人々が買っていく秘薬は、蛇やハイエナ、猿の噛みつきから身を護るという触れ込みだ。お守りと護符は、ナイジェリア人の多くが不運の原因だと信じている魔女や魔術師の悪戯から人々を保護することになっている。
芸人たちはナイジェリア中にファンを持つだけではなく、カメルーン、ニジェール、チャドなどの近隣国でも商売を行なっているが、ナイジェリアの警察からはあまり敬意をもって扱われていない。彼らは、動物を使って一般人を威圧し、恐喝して金品を奪ったとして一座を起訴している。
「ことが起こったのは昨年のことだ」アブドゥラヒは言う。「我々が検問で止まるのを拒否したので、警察は発砲し、2匹のハイエナと2人の仲間の警察官を殺してしまった。彼らは我が身をかばうために、我々を武装強盗として告発したんだ。幸いなことに、事件は立ち消えになったよ」
地方の新聞記事の主張はそれとは異なり、「ハイエナと猿を使って強盗を行っていた武装ギャング」が警察と銃撃戦を繰り広げたという。記事によると、ギャングのうち2人は殺され、4人は逮捕。ハイエナに噛まれた警察官が1人病院で死亡し、ハイエナと猿は射殺された。
何が起こったにせよ、アブドゥラヒの家族は、どこでハイエナを補充できるか、そしてどうやって訓練するかを知っていた。一座は必要な補給品と、厳選したお守りや鎖、護符を持って、「一、二ヶ月ばかり」山にこもって過ごした。
「動物を洞窟から引きずり出した後は、戦いになる。まだ人間に馴れていないからね」調教師の一人は語る。「秘薬を使うと、動物は自動的に従順になる。我々の命令に従い始めるんだ」
調教師たちは、動物の訓練には一、二ヶ月を要すると言う。他の動物や人間の存在を受け容れさせ、暴力に訴えない、今までとは異なる遊び方を学ばせなければならないのだ。
見返りとして、調教師たちは、屠殺場から購入した屑肉をハイエナに与えている(三日に一頭の山羊を与えることも、動物たちの攻撃性を抑えるのに役に立つ)。動物との良い関係を維持するには、技能と気転の両方が必要だとアブドゥラヒは言う。
「獣たちは注意深く、どんな小さな音でも目を覚ましてしまう」と彼は言う。「熱い環境が嫌いだから、涼しい場所に置かなければならない。必要なときには、体に冷たい水を撒いてやることもある。彼らは非常に敏感な生き物なんだ」
新聞記事より抜粋:
ハイエナと猿を操るギャング逮捕さる
本日(ラゴス)、2004年6月17日
カツィナ州でハイエナと猿を使って強盗を行っていた4人の武装ギャングが、ビチでの銃撃戦の末に警察に逮捕されたと、カノ州のビチ地方政府が伝えた。
カツィナでマスコミに対して発表された声明によると、7人からなる強盗団は、動物を見世物にするためカツィナ州カンキア地方政府のカンキア・マーケットに行き、興行期間中にN66,000を強奪した。
声明によれば、その直後強盗は逃走し、警察にカノ州のビチまで追跡された。ここでの銃撃戦によって2人の強盗が死亡した。戦闘の最中、強盗の放ったハイエナと猿に噛みつかれた警官が1人、カツィナ総合病院で危篤状態になっている。
強盗のうち2人は射殺され、4人がその場で逮捕された。ビチでの戦闘で、警察は二匹の動物も殺した。