自壊する帝国

 大帝国ソ連の崩壊のプロセスを、外交の最前線にいた当事者の目から描いた佐藤優のノンフィクション。巻を措く能わずなのは相変わらずで、すこぶる興味深く読んだ。同じテーマで事前に出た、宮崎学との共著『国家の崩壊』を分析的とするなら、こちらはより主観的で、自分自身の成り立ちに触れた部分も多い。アントニオ猪木とタッグを組んでロシアの政治ゴロをウオッカで飲み潰す佐藤優カッコヨス。
 あとがきで、「『国家の罠』が売れないと思ってた予想が大外れで驚いた。外務省を辞めたあとは学問に没頭するつもりだったが、読者との双方向性をもう少し味わっていたくなった」というようなことを率直に書いていて、インテリジェンスのプロという外面に隠された人間味を垣間見たような気になった。あと佐藤優も、ぬこかわいいよぬことか言ってる人種の一員だということも判った。

自壊する帝国

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