フェアリイ・ランド

 文庫版で再読しました。舞台はドールと呼ばれる人造人間が道具として使われている近未来のヨーロッパ。知性化されたドールである「フェアリイ」たちの存在が人類社会に混乱をもたらす中、フェアリイという種族の誕生に手を貸すことになった遺伝子ハッカーの主人公が、みずからのカルマとなった「妖精の女王」を追い求めるというお話です。
 遺伝子工学的に生まれたフェイたちがユーロディズニーランドの廃墟で人を狩って取り替え子を作ったり、擲弾筒で武装した「トロール」や、倫理観を抑制した殺人兵士「人狼」など、魑魅魍魎が森の中をうろついていたりと、遺伝子もミームもハックされてぐちゃぐちゃになったヨーロッパの描写が楽しいです。売り文句は「テクノゴシック」。僕はアルバニアの原野でうろうろする三章が好きすぎるのでどうしても点が甘くなっちゃうんですけども、90年代の匂いも濃厚な、マイフェイバリットSFなのです。

フェアリイ・ランド (ハヤカワ文庫SF)

フェアリイ・ランド (ハヤカワ文庫SF)

フェアリイ・ランド (海外SFノヴェルズ)

フェアリイ・ランド (海外SFノヴェルズ)

 ハードカバーの方も載せとこう。背表紙の変な生き物ラブ。