『ニャルラトテップの仮面』幕間

 われわれのうち何人か、ことによっては全員が、遠からず死ぬだろう――。「狂人の直感」によって自らの命運を悟ったグレッグ・ベアクローは、ロンドン行きの船上において、事件に関する資料とこれまでの経緯、真相についての推測をまとめたスクラップブックの作成を猛然と開始した。アフリカから来た邪教集団、失踪した探検隊、ニューヨークで遭遇した悪夢について彼は書き綴り、同行する仲間たちにも半ば強引に筆を執らせた。いつしか彼はこの資料を、死んだ友人から名を取って「ブラックサンド文書」(Blacksand papers)と呼ぶようになった。
 なお、最初に書かれた時点では、文章は比較的冷静であるが、苦しみ悶える顔の絵が余白にびっしりと描かれているなど、穏やかならぬ雰囲気の漂うページも散見される。

 ――この事件を追い続けようとするならば、個人を単位に思考してはいけない。ニューヨークを脱出して以来、私は日に日にその意を強くしている。チームを一つの生命体と見なし、損害を前提とした上で、ダメージ・コントロールを考えなければならない。我々が倒れたあと、次の世代に、次の次の世代に、我々の持つ限りの知識を伝え、探索を引き継いでもらわねばならない。
 このような考え方が、どこから私の心にとり憑いたのか――。おそらくそれは、あの屋敷で遭遇したものに関係がある。実のところ、あの屋敷で何が起こったのか、今でもはっきりとは思い出せない。ただ記憶にあるのは、たくさんの顔 顔 顔顔顔顔顔 顔   そうだ、たくさんの顔を持つ敵に抗するなら、我々もまた多頭の怪物になる必要がある。奴らは我々を排除することはできるかもしれないが、知識を受け継ぐ手段がある限り、次の探索者が生まれることを阻止することはできないのだ。
(1925年、北大西洋航路の途上にて、グレッグ・ベアクロー記す)

 というわけで、『ニャルラトテップの仮面』全滅対策にセーブファイルを作成してみました。いくばくかの正気度と引き換えに、事件についての知識を得られるマイナーな魔道書という感じで。
 育てていけば<クトゥルフ神話>と呪文倍数もつけられる……カナ?
 ちなみに1920年代にはまだダメージ・コントロールの概念がありませんが、それも「狂人の直感」ってことで。狂人超便利。