万物理論 ISBN:4488711022

walkeri2004-11-25

 感想マダー?とせっつかれては書かねばなるまい。面白かったですよ。TOEのあたりは解ったふりをすることすらできないけど、もっともらしく書こうとする努力は伝わってきました。イーガン自身が理解してるわけじゃないもんな。しかし理屈がわからなくても読ませるのはさすが。宇宙論の部分が手ごわい一方、病気したり腹切ったりなんやかやと、びっくりするほど解りやすい身体性復活テーマの話でもありました。この辺は日本人の読者にとってもすんなり受け止められるんじゃないかしら。養老孟司と対談とかすると面白そうだよ。小ネタも多くて、というか一つ一つが短編どころか長編に膨らませられるほどのネタが溢れかえっていて読み応え充分。サイバーパンクにおけるデッドテックなガジェットの奔流を、自然科学と社会科学のアイデアで置き換えた感じ。前半のフランケンサイエンス取材パートとかめちゃめちゃ面白いよ。特に力が入っていたのは、これも身体性の話がらみなんだけど、ジェンダーセクシュアリティに関するネタでした。というかこれがサブテーマなのかな。汎性、転男女、微化女性、強化男性などなど、性別のバリエーションが増えてそれぞれに呼び名があるのが、ベタながら面白い。トランスの人の感想が聞いてみたくなりました。
 主人公のダメさはなかなか秀逸。以前、板倉さん(id:ita)に「理系の研究者にとって痛い描写がある」と聞いてて、読んでみてナルホドと思ったんだけど、僕は別の部分で身につまされてしまいました。さすがにこれは人に言えないな。主人公の心境がすごくよく解ってしまって苦笑するほかありません。うあー。