おひっこし(その3)
一行は荷造りと物件探しの二手に分かれる。物件探しを担当するのはコカコーラとエルガイムの路上生活者コンビ。
「マーク・ハミルを探すわよ」エルガイムは宣言する。「『地底1999』でハミルは言ってたわ。「情報がほしかったら俺を探しな」って!」何か致命的に勘違いしている沙京星人エルガイム。「『シャブ1999』ではこうも言ってたわ。「シャブと俺とどっちが大切なんだ」って……」
マーク・ハミルは見つからない。道行く人に聞いても「さっきまでいたんだけど」「いまそこの角を曲がって行ったよ」とか言われるばかり。ハミノレンとかいうパチモンくさい高校生を恋愛攻撃で虜にしたりしたが、こいつがまた糞の役にも立ちゃしない。コカコーラはずーっと「艦長と部下」ごっこをしている。「艦長! 前方に感あり!」「全速前進!」「全速前進!」(←復唱してる) そして電器屋の店先でテレビにかじりつく。あっという間に時刻は昼を回る。
一方、ビオフェルミン宅では荷造りがほぼ終わる。壊れたテレビを除いて。
「壊さなきゃよかったね……」
「そうだね……」
ビオフェルミンは壊れたテレビを恨みがましく見つめる。物件を探しに行った二人からの連絡はまだない。そもそもあの二人は携帯電話を持っていないのだ、と遅まきながら気付いてビオフェルミンとマツヤは呻き声を上げる。
「……ちょっと出てくるわ」テレビを抱えてビオフェルミンは立ち上がる。
ビオフェルミンは近所のどぶ川にかかる橋の上からいまいましいテレビを蹴り落とす。黒沢清っぽく寒々しいロングショットで。ようやく厄介払いができた……。すっきりした顔で振り返った彼女は「おかん」6体に囲まれていることに気付く。サタスペの「おかん」はジャイアンのママみたいなモンスターで、結構な強さを誇る。破壊力重視の戦闘亜侠とはいえ、作りたてのキャラが6体を敵に回して勝てる望みはない。
ビオフェルミン「それじゃ、どっかそのへんでテレビを捨ててきます」
DD「じゃあ、中華街の治安10を目標値に犯罪で判定してくれる?」
ビオフェルミン「(てっきりワンダリングモンスターチェックかと思って)え? なんで? 治安がいいのに、なんで治安を目標値にして判定するの?」
DD「違うよ。不法投棄の判定だよ」
ビオフェルミン「……ああ! こっちが犯罪者なのか!」
「ひいっ」「スーパースターだかなんだか知らないけど……町内会の掟は絶対!」「ゴミの捨て方は守ってもらうよ!」「す、スンマセン! ほんとスンマセンしたッ!」
どぶ川からテレビを拾い上げてとぼとぼ帰るビオフェルミン。もうマジ泣き入ってます。
帰ってきたビオフェルミンを見てマツヤが目を剥く。
「なんで持って帰ってくるの!?」
「だあってえぇぇ(涙目)」