おひっこし(その4)

 この時点でビオフェルミンは精神点を10点中8点使っており、ほぼ役立たずに成り下がっている。物件探し組からは音沙汰一つない。業を煮やしてマツヤは外に出て行く。取り残されたビオフェルミンは、自販機で缶ビールを買ってプルタブを開ける。ブロック塀に寄りかかって呷ると、きりきりと痛む胃に冷えたビールが心地よい(精神点1回復)。夕暮れである。茜色に染まった空をカラスが飛んでいく。と、そこで携帯電話が鳴った。マツヤからだ。物件が見つかったのだ。それも二件。十三にある二階建ての一軒家と、もう一つは古い洋館だ。どちらも異様に家賃が安い。不動産屋はしきりに売り込もうとする。「これいいよ、ほんとよ。こんな条件のいい物件もうないよ」「なんでこんなに家賃安いの?」「え、それは、まあちょっと。さ、さ、契約するね」
 ものすごく嫌な感じの物件だが背に腹は換えられない。ビオフェルミン(生活2)はマツヤ(生活4)を見る。
「…………」
「え。なに。あたしが出すの?
「……おねがい」
 なお、ここに至ってもコカコーラとエルガイムは何の役にも立っていない。
「コーン……コーン……」「艦長、ソナーに反応ありません!」(パッシブソナーごっこ
「あっ! ハミルがいたわ! あそこよ!」
 引っ越し資金を出してもらったビオフェルミンは、契約書に記入しながらマツヤに言う。「あなたはまだ若いし、こんなところよりもっと相応しいチームがあるのにね。……こんなことになって、ごめんね」ぽたり、ぽたりと契約書に涙が落ちる。「ごめんね。本当に、ごめんね」

 コカコーラとエルガイムが帰ってくる。急いで車に荷物を積み込む4人。だがマツヤのスバルには積み切れない。テレビが邪魔だ。結果、荷物3つとツワナとコカコーラがスバルに乗り、エルガイムが不動産屋を篭絡して自分と荷物を一つ不動産屋のロールスロイスに載せてもらい、ビオフェルミンはテレビを荷台に括りつけた自転車で、それぞれ新居(二階建ての一軒家)に向かうことになった。しかし……。
「艦長! 後方に感あり、敵艦です!」
 荷台に「侠客」と「三下」を満載したトラックが一行を追いかける! 大家の牛頭の差し金だ。牛頭は始めから違約金が目当てだったのだ! 3対1のケチャップになる。スバルとロールスロイスは着々と追っ手を引き離す。だがビオフェルミンは自転車だ。あっけなく追いつかれ、取り囲まれるビオフェルミン
「あー」後ろを見て暗い顔になる残り3人。
「どうしよう。置いていこうか」
「荷物は全部あるしねえ」
「引っ越しはそのものは滞りなく終わるよねえ」
「引っ越しは無事終わって……」
……家主はいない
「艦長!」「だめだ! わが海軍に味方を見捨てる伝統はない! 転舵しろ!」
うるせえ、黙ってろ
 しょうがねえ戻るか。というわけでビオフェルミンの救援に駆けつける仲間たち。
「魚雷発射!」「魚雷発射!」(←復唱してる

 感動の展開だがサタスペの戦闘はそんなに甘くない。侠客2人の日本刀と三下4人のサタスペ(粗製拳銃)で次々に倒れていく新世界ダイナマイトトロールズ。既にグロッキーだったビオフェルミンが真っ先に沈み、コカコーラ、ツワナが続く。気絶したところに容赦なく止めを刺され、コカコーラとツワナは死ぬ。最後まで立っていたエルガイムも、よく頑張ったが、四方を囲まれてぐさり。「よく見りゃべっぴんじゃねえか。命までは取らないでおいてやるぜ」
 気絶したビオフェルミンエルガイムは、血をだくだく流したまま、侠客に髪を掴まれて引きずられていく。実にセックスアンドバイオレンスな絵面である。


 DDエルガイムは強制的に娼館送り。ビオフェルミンは娼館かタコ部屋か選んでいいよ」

 ビオフェルミン「……タコ部屋がいいかな。武器がありそうだから

 DD「じゃあ、マグロ漁船表振ってね」
 こうして新世界ダイナマイトトロールズは全滅した。このお話の教訓は、直前になって慌てないように、引っ越しの準備は前々からちゃんとしとけ、ということである。また、すべてが狂い始めた原因はテレビを壊したことであり、一人のヲタクがライダーとプリキュアを見たがったことである。ここからも何がしかの教訓を読み取ることができるかもしれないが、それは読者の皆さんにお任せする。