Chant for Yamanote Line

朝の通勤電車の中、唐突に聞こえてきた声があった。
ぃ゛ーあ゛ーい゛ーあ゛ーい゛ー
ぁ゛ーい゛ーあ゛ーい゛ーあ゛ーい゛ー
不自然に潰れた独特の声色。
座席に腰をかけて目を閉じた声の主は明らかに坊主であった。
それだけ唸って坊主はまた黙った。耳にはイヤホンを着けていた。
お経の練習のためにテープでも聞いていたのだろう。
前に立っていた若い女性は素早く隣の車両へ逃げた。