AVP2 エイリアンズVS.プレデター

 昨年の映画納めはこれだったわけですが……
 悪くない……悪くないぜ。
 手裏剣居合とジャンプ槍刺し以外に見所がなかった一作目に比べて、はるかに愛を感じるB級ホラー映画でした。
(以下ネタバレ感想)
 今回の作品、時系列的には前作の直後。南極から回収されたスカーの死体から出てきたプレデリアンが、プレデターの着陸船の中に出現、慌てたプレデターがこともあろうに船内でショルダーキャノンをぶっぱなしたせいで船は地球に墜落。なんたる士道不覚悟! 墜落の報は超光速のリアルタイム通信でプレデターの母星に届き、歴戦の戦士"ザ・クリーナー"が後始末のために地球にやってくるのでした。
 前作のヌルさの原因の一つに、出てくるプレデターが成人の儀式を受けようとする若造三人組だったことが挙げられますが、今回はその反省を生かしていきなり強い奴が来る。ただ虫どもとプレデターのテクノロジーの痕跡を消去することだけが目的なので、人間なんか一顧だにしません。そこでまずファーストステップはクリア。
 人の死にっぷりと展開の速さもよいです。90分少々という短さなので、船が墜落した直後にはもうフェイスハガーが現地人を襲う。酸の血液で腕はもげるわ子供は寄生されるわ。ほんの数分後にはチェストバスターが孵化するわ。そしてどうでもよい人間たちの最低限の人物描写。相互にまったく関係ない背景設定は、ランダム表で作ったTRPGのキャラみたい。これら死ぬために生まれた連中を、暗いところでみるみる殖えたエイリアンが、みるみるうちに殺していく。怯える犠牲者に顔を近づけて、「見て見て! 僕の顎こんなに伸びるんだよ!」
 そしてわれらがプレデター。もうこれは歌舞伎だと思う。光学迷彩バシバシいわせながら水から上陸。カウントダウンで爆破。新しいおもしろ武器とひみつ道具。画面上からガサッと降ってくる。人の生皮剥いで木に吊るす(地面に滴る血を見つけた人間がゆっくり見上げる→目線を捉えたままカメラ上昇→「なんてこった……」→筋肉むき出しの逆さ吊り死体がフレームイン)。負傷して蛍光グリーンの血を流す。ふしぎ治療が傷に沁みてグワアアアー。最後はショルダーキャノン外して兜脱いで吼えてプロレスする。やらなかったのは声真似ぐらいか。
 プレデターの特徴として、「強いけど意外とうかつ」というのがありまして、今回はそのうっかりさんっぷりも存分に発揮されています。一番笑ったのは、手裏剣投げたらたまたま射線を横切ったビッチがぶっちらばったシーンでしたが(ファンブル?)。なぜ彼らはあんなにうっかりなのか。みんな気を遣って言わないのかもしれないけど、あの視界の悪さが原因じゃねえかな……。あと「妊婦・子供・病人は狩らない」という特徴もあるけど、これに関してはエイリアン陣営による徹底的なリソース侵害が行なわれておりました。プレデターが見逃して点数を稼ぐはずの妊婦・子供・病人が、エイリアンによってことごとく先回りして虐殺されていく展開は、なんだか我々に見えないところでメタな戦いが行なわれているかのようでした。
 手放しで褒められる作品ではないのは確実で、前作から改善されてない一番の不満点は、殺陣の画面の暗さと寄り過ぎのカメラ! ほんとなんとかしてほしい。あのスーツ着て動いたらもっさりするのはわかるんだけどさ……。Batman: Dead Endとか見ても、もっとちゃんとやれると思うよ。
 総評としては、過去の両シリーズの勘所を押さえた、教科書どおりのB級ホラーである上で、新しいアイデアもいろいろと試している作品だと思います。僕は楽しんで観ることができました。
 人には勧めません。