マイ・ボディガード

walkeri2005-01-11

 邦題にいつまでも文句を言う気はないんだけど、最初の字が「マ」なので、原題の"Man on Fire"が最初に浮かんで、思い出すのにいつも時間がかかってしまう。
 それはさておき、面白かったー! 対テロ部隊で16年を過ごしたがバーンアウト、酒びたりの日々を過ごす男クリーシィが少女ピタに出会い、失いかけた命を取り戻す過程を丁寧に描いた前半から、悪党とっ捕まえて拷問、情報ゲット→次の悪党とっ捕まえて拷問、情報ゲット→(以下略)という後半の対比は鮮烈。もう俺はこの気の抜けた邦題を赦した。なぜならこれは罠だからだ。クリーシィの すごい 暴力 によって、感動作品だと思って映画館に誘い込まれたぬるいカップルの度肝を抜くための罠。いやあ、結構混雑してたんだけど、ソロで来てるのが俺とあと一人しかいなくて、ほか全部カップルなのね。で、クリーシィがメキシコ人の指切ったりしてるシーンで、隣のカップルの女の子顔上げられなくなっちゃったりしてね。なんでかとっても嬉しくなったね。ハッハ。
 原作とは違う展開の脚本を罵る向きもあろうが、イヤ待て決してそうではないぞ。日本での売られ方に騙されてはいけない。これは断じて、商業主義に屈した安直な脚本ではない。帰ってからざっと読み直してみたところ、むしろ非常にうまく原作を料理していることに感心した。原作にあるゴッツォ島のくだりをまるごと抜いたおかげで、クリーシィの行動と動機がより明確になっている。負傷した後のプールのシーンが印象的だ。原作では自らの身体をよく知り、辛抱強く回復を待っていたクリーシィだが、映画では出血も止まらぬまま、プールの水を赤黒く濁らせて泳いでいるのだ。ゴッツォ島がないということは、帰る場所ももはやないということで、そのへんもラストシーンに効いてくるのだった。あの終わり方に納得できないなら、原作のクライマックスを思い返してみるといい。そして、あれがそのまま映画になったらどうなっていたか想像してみるといい。あなたの頭に浮かぶ画、それは『コマンドー』でも観ておけば済むようなものではないか?
 ちなみに、カメラワークではかなり遊んでいる。遊びすぎて、ガチャガチャうるさい場面も散見される。しかし、凄惨な暴力描写と見せて、実は直接は映していなかったり*1と、基本はしっかりしてるので安心だ。
 主演二人は素晴らしい。デンゼル・ワシントンはめちゃめちゃかっこいい。海外版のポスターでも見られるスーツ姿がよく似合っている。そしてダコタ・ファニング! 「恐ろしい子」とはこういう役者のためにあるような言葉だ。あとピタのお母さんがとてもエロい。背中フェチなのでハァハァした。
 などと、ちょっと男子度を上げた文章を書いてみた。原作知ってても知らなくても是非見るべし。素晴らしい映画だった。

*1:暴力を直接映すよりも、観客の想像力にゆだねる方が、凄惨な印象はずっと強まる。