アトミック・カフェ

 アメリカの核兵器プロパガンダ映像を切り貼りして一本の映画にしてしまいました、という作品。区分としてはドキュメンタリー、になるのかな。今の目で見ると、核兵器の必要性と安全を強調する言葉の数々があからさまにおかしいので、全編通して黒いユーモアが溢れんばかり。しかしそれは今だからこそ言えることでもあって、当時のアメリカ人は本当に自分たちの言葉を信じてたのかもなあ、とも思いました。今もあんまり認識変わってない気もするけど。
「気をつけるものが三つある。爆風、熱、そして放射能。この放射能だけが新しい要素だが、実は三つのうちでは一番取るに足らないものだ」こんなことを言われて戦術核実験に付き合わされた兵士は気の毒すぎる。立ち昇るキノコ雲に向かって進軍する無防備な歩兵の画は何度見てもぞっとします。ある種の禍々しい美しさがあることも否定できませんが。世の中には爆心地で騎兵突撃させる国もあったりして、上には上です。
 それにしても、核実験に巻き込まれた南太平洋の島嶼民の境遇は、あまり報道されない分、改めて見せられるとかなり辛い。日本を指して「唯一の被爆国」と表現することがあるけど、ああいうの見ると、あんまりよろしくない言い方だと思ってしまいます。