スチームボーイ

walkeri2004-07-23

 さあ困った。変な映画です。嫌いではない、けど、おそろしく起伏に欠ける。なんでこんなにドラマ部分がゆるゆるなんだろう? どうゆるいか具体的に言うと、例えばシーンの切り替えが全部フェイドアウト。えー、ありなのかそれ。編集途中のフィルムを見ているような気分になりました。シーンどころかカットのつなぎもフェイドアウトが多用されてたな。十年かけたのはCGだけなのか……。話の仕組み自体は悪くないと思うんだけど、緊迫感のない編集が魅力を殺いでしまっている印象があります。編集っていうか絵コンテの段階からの問題だろうな。
 翻ってビジュアルの方は大変素晴らしい。この人はもう機械が描きたくて描きたくてしょうがなかったんだね、というのがよくわかります。モノホイール、飛行船、蒸気動力甲冑に蒸気戦車*1、マスタースレイブのクレーン! スチームパンクに燃える人間なら、作劇上の難点に目をつぶっても観に行く価値はあります。蒸気機関バンザイ。確実に巨大建築愛好会向けの映画だし*2
 主人公の父親と祖父はどっちもキジルシで、両手広げて演説する系の、由緒正しいマッドサイエンティスト。でも言ってることに新味がなくてなあ。科学についてのそんな議論は19世紀中に済ませとけ!(いや、舞台設定は19世紀なんだけど、でもさあ)。あと、なんでか主人公がすごい好感度高かった。ショタだから? いやいや。違います。なんかね、環境だけ見るとすごいひねくれてそうなんだけど、えらい素直で、いい意味で子供っぽいのが魅力的でした。母親を「おかあさーん」と呼ぶところとか。声優の演技もよかったのかな。
 結局、一番わくわくしたのはエンドクレジットでした。続編へのつなぎとか言ってないで、あれを本編でやってよ!

*1:スチーブンソンの工房に入ったときの戦車の動きが大好きだ。あれはたまらん。

*2:でも、巨大建築に対する愛もそれほど感じなかったんだよな……。終盤なんか、スチーブンソンの視点にカメラ置いて、ロンドン市街とスチーム城のロングショットが入るものと期待して観てたのに、画面に出てくるのはスチーブンソンの驚いてる顔ばかりだったのでションボリしたよ。