おおきく振りかぶって(1) ISBN:4063143422

 おもしろいっ!ひぐちアサはデビュー当時(『ゆくところ』)から好きだったけど、これ、今までで一番好きです。一般に評価の高い『ヤサシイワタシ』を理解するにはおれは幼すぎたけど、これならわかるぞ。おれは球技全般が嫌いなんですが、にもかかわらずというか、だからこそというか、ものすごく楽しめました。
 おれが球技が嫌いなのは下手だからです。下手でも個人競技ならいいですよ、自分が恥をかくだけだし。でも球技ってふつう団体競技ですよね。ヘタクソだと、自分のせいでチームが負けるわけですよ。相手チームは当然こっちの弱点を突くから、ヘタクソなおれのところにボールが飛んでくる。それでどんどん点を取られる。恥ずかしいわ悔しいわ申し訳ないわで顔も上げられない。楽しくもなんともない。といった経験を小中学校でたっぷり味わってきたので、すっかり球技が好かんようになりました。自分で出たいわけじゃなくて、体育の時間とか球技大会とか、否応なく試合に出されるシチュエーションがあるでしょう。あれが嫌だった。試合を鑑賞する趣味でもあれば練習の一つもしたんでしょうけどね。そもそもまったく関心がなかったので上手くなろうとも思わなかったし。今思うと、あの頃のおれには、とっととサボっちゃう不真面目さが必要だったように思います。そんな有様なのでこの漫画の三橋のいじけっぷりには共感しまくり。三橋は野球が好きで練習もしてるし、実は才能もあるので、おれとは全然違うんだけども。でもすごくわかるのよ、もうやだーって思いながら投げてる気持ちが。
 そういう個人的な琴線を別にしてもこの漫画は面白いです。キャラクターの動揺とか感動がダイレクトに伝わってくるので読んでてぐらぐら不安定になってきます。グジグジした三橋を怒ったりいじったり煽ったりする周りのキャラクターもすごくいい。阿部はもちろんだし先生もいい味出してるしあと監督! モモカンすごい! 大好き! もうこの人は野球が好きでたまんない人なんだけど。エロいし強いし男らしいしで(あ、女ですよ念の為)もうメロメロよ。
 読み終わってしばらく興奮が冷めませんでした。あと副作用で、人に触りたくなりました。具体的に言うと手を握りたい。そういうシーンがあるのよ。あれはいいですね、すごくいい。なんというか、終始身体に来る漫画でした。あー、早く続き読みたいなー。アフタヌーンは変な付録がついて立ち読みもできなくなってからは、もう手に取ることすらなかったけど、こんな面白い漫画やってたとは。単行本で一気に読めてよかった。