影が行く―ホラーSF傑作選 ISBN:448871501X

 仕事帰り、職場から乗換駅までの電車で持ってた本を読み終わってしまうと、こういう買い逃してた本をつい駅の本屋で買ってしまうわけでして。収録作は以下の通り。

『消えた少女』(リチャード・マシスン)
『悪夢団』(ディーン・R.クーンツ)
『群体』(シオドア・L.トーマス)
『歴戦の勇士』(フリッツ・ライバー)
『ボールターのカナリア』(キース・ロバーツ)
『影が行く』(ジョン・W.キャンベル・ジュニア)
『探検隊帰る』(フィリップ・K.ディック)
『仮面』(デーモン・ナイト)
『吸血機伝説』(ロジャー・ゼラズニイ)
『ヨー・ヴォムビスの地下墓地』(クラーク・アシュトン・スミス)
『五つの月が昇るとき』(ジャック・ヴァンス)
『ごきげん目盛り』(アルフレッド・ベスター)
『唾の樹』(ブライアン・W.オールディス)

 ただのホラーじゃなく、「ホラーSF」とわざわざ銘打つだけあって、なんらかのSF的なネタが仕込まれた作品ばかり。手を変え品を変えて飽きさせません。特に気に入ったのは、スピーディな展開と人間のやられ方が気持ちいい『群体』、霊のようなものに科学的に迫ろうとする努力が愉快な『ボールターのカナリア』、心底ひどい話『探検隊帰る』、熱に浮かされたようにハイテンションな『ごきげん目盛り』。タイトルのかっこよさは随一の『唾の樹』は、クトゥルフ・バイ・ガスライトの田舎版みたいで、ウェルズとかのあの時代が好きな人にはたまらんかも。
 それにしても表題作の『影が行く』は素晴らしいな。『遊星からの物体X』の原作であることは有名ですが、再読しても格が違います。読んだことのない人はこれだけ目当てに買ってもいいくらい。これもタイトルがいいよね。原題の"Who goes There?"も、邦題の『影が行く』もかっこよすぎ。これ考えた人は神だ。
 粒がそろったいいアンソロジーで、こういうの好きな人はもとより、ホラーとかSFとか普段あんま読まない人でも充分楽しめると思います。おすすめ。