ナイト・ウォッチ

walkeri2006-04-04

 期待のロシア製ダークファンタジー映画『夜警』、観てきましたよ。気合の入った画作りで楽しめましたが、うーん、こりゃ一般受けはしないなあ。やってることは真っ正直な伝奇アクションなのに、こなれてないところが結構あって、この手の分野に慣れてない人にはつまんないと言われちゃう可能性が大きいです。上映館が少ないのもちょっと納得してしまいました。
 光と闇の二大勢力に属する異種たち(the others)の闘争という背景設定は単純で解りやすいものですが、その一方で、ストーリー上重要な設定がぽんと放り出されていて観客を混乱させます。説明なしではとくに解りにくいと思われるのが「異界」の設定です。劇中、登場人物たちが「異界」に入るシーンが随所にあります。英語字幕では"gloom"(暗がり、暗黒、暗影、憂鬱、陰鬱)と呼ばれているこの場所は、物理世界に重なり合うように存在する「この世の裏側」であり、シャドウワールドであり、浅いアストラル界です。ワールド・オブ・ダークネスの言葉でいうなら「Penumbra(半影界)」です。例えば、序盤に出てくるヴァンパイアが姿を消すのは、物理世界からgloomに「stepping sideways(脇に逸れる)」しているからです。このときヴァンパイアの姿が鏡に映っていますが、そこに映し出されているのは、物理世界ではなくgloomの中のヴァンパイアの像です。後半にも同様に、鏡を使った描写があります。
 異種たちが人間に向かって「おれたちが見えるのか?」と問いかけるシーンが何度かありますが、gloomに隠れた異種を視ることができる者は、gloomを視るというその一事をもって、すでに人ならぬ異種なのです。世界にgloomという「裏面」があるということを理解するまでは多くのシーンが意味不明になってしまいます。困ったことに、主人公が最初に訪れるアパートの一室でいきなりそういうシーンがあるんですよね。
 また、異種の中にはイモータル(不死者)が含まれます。たとえば光と闇の頭目二人は、それぞれ冒頭の橋の上で対峙した二つの軍勢の指揮官であり、従ってどちらも何百年も生きていることになります。異種全員がイモータルなのかどうかは、映画からでは判りませんが、光公社の従業員の中の何人もが冒頭の光の軍勢に加わっているように思われます。
 もう一つ重要な事実として、この映画は三部作の第一作であって、完結していません。これを知らずに見に行った人は間違いなく憤然と帰る羽目になるでしょう。
 以上、原作小説読まないままの適当解説ではありますが、これから観る人の一助になればと思います。