シン・シティ

walkeri2005-10-03

 オサレでダークなアクションものだと思って観た人にはお気の毒。首とか腕とか脚とかズバズバ飛んでいくスバラシイ残虐映画でした。
 原作をそのまま映像化という謳い文句は伊達ではなく、その移植度はほとんど偏執狂的に思えるほど。全編モノローグで進行するところまで忠実なのはやりすぎだと思いましたが。ほぼ休みなしに延々と喋っているので、観てて疲れてしまいました。お世辞にも万人向けとは言えない映画ですが、いかにもコミック原作らしいケレン味の効いたバイオレンスが許容できる人なら、絶対に見逃してはいけない傑作です。
 さてこの映画、一本にまとまってはいるものの、実は三話からなるオムニバスです。合間にタイトルが挟まったりするわけではないので、ぼーっと観てると混乱するかもしれません。
 三話いずれも、いまどき珍しいほど、マッチョな価値観をストレートに表した話です。一昔前の祥伝社ノベルズ的というか、Men's Adventure的というか。逞しい男がエローイ女のために殺したり拷問に耐えたりする類。いまの時代にそういう男くさい人種は似つかわしくありません。つまり彼らは生まれる時代を間違えた希少種なのです。こういう男たちが死狂いするとどうなるかというと、死体の山ができあがります。この映画はまさに、死狂いした男どもが凄まじい暴力の嵐を巻き起こしながら嬉々として死に赴く様を描いており、したがって『シン・シティ』は葉隠映画です。もしこの作品を日本人が漫画化するとしたら、平田弘史をおいて適役はいないでしょう。ハーディガンやマーヴに比べてドワイトがへたれに見えるのは、彼が葉隠尺度に則って動いていないすくたれ者だからです。彼は決して臆病者ではなく、むしろ勇敢なのですが、葉隠で言う「犬死に気違ひ」の境地には届いていないため、相対的にへたれに見えるのです。
 キャラクターとしてはマーヴとケビンが最高でした。マーヴの手斧でばきばきぶん殴る殺陣と、ケビンの素早さの描写がとてもよかった。ミホはあの面子の中でもとりわけ異物感があってワロス。もうちょっと刀使って暴れてくれると嬉しかったです。