ヒトラー 最期の12日間

walkeri2005-07-24

 あのう、ヒトラーって、いまどきの若者に対してそんなにキャッチーな素材なんですか。新宿も渋谷も超満員だったんですが。いくら公開二日目で箱が小さいとはいえ、ここまで大繁盛なのは一体全体どういうわけだろう。客の内訳も、女子二人連れとかカップルとかばっかりだし……。基本的に鬱展開で、カップルバスター映画としての要件は充分に満たしてると思うけどなあ。
 題材が題材なので、元気が出るような話にはしようもないとはいえ、全編を覆う死の気配は圧倒的です。病院地下の見捨てられた老人たち、ナチスの思想に殉じて死ぬ気満々のアーリア系美少女、拳銃か服毒かと自決の方法を熱っぽく話し合う大本営の将校たち。物語の大部分は大本営のブンカー(防空壕)内部で展開しますが、総統というラスボスを頂いて、「狼の巣」と名付けられたこのコンクリート製のダンジョンには、いたるところに敗北と死が影を落としています。監督は相当に性質が悪く、子供が死ぬ場面で執拗にカメラを回し続けたり、野戦病院の外科手術でノコギリを使っているところを何回も撮ったりするなど、ラース・フォン・トリアーと同方向の、観客への嫌がらせに向けられた類まれなる情熱を感じずにはいられませんでした。瓦礫の灰色と血の赤で塗りつぶされたタナトス映画です。
 僕は大変楽しんで観ましたが、劇中のヒトラーを見て、「日本人がヒトラーを演るならビートたけしで決定だなあ」とか色々間違った感想を抱いたりもしました。ちなみに僕がこの映画を観ようと思ったきっかけは、「マイネ・ザッヘ」の紹介記事です。リンク先左側のカテゴリ欄から「映画」をクリックすると出てきます。元々自分はそんなにナチスドイツに関心がなかったのですが、こちらの「映画を楽しむための背景」はとても興味深いものでした。おすすめ。