ヘルボーイ

walkeri2004-10-12

 やーよかったよかった。充分楽しめましたよ。ちゃんと原作を尊重した上で、映画として面白くしようという心意気にあふれた映画でした。失敗してる部分も正直あると思うけど(笑)。もうね、オグドル・ヤハドの水晶の牢獄が直球で出てきただけで大感激。原作でも唐突だった異次元の監視員たちも出てくるかと思ったけど、さすがにそこまではなかったな。
 BPRDの建物はもうちょっとシックなのが好みだけど、この監督はギミック好きなんだな、基本的に。ロシアに行ってからの展開も、明らかにそんなトラップ要らんやろと思うような仕掛けだらけだったし。
 ヘルボーイ役のロン・パールマンははまり役でした。リズに告白するシーンは実感こもってますね。「君がおれのどこが嫌いかはわかっている」。泣ける。ヘルボーイの育ての親、ブルッテンホルム教授が元気な姿を見せてくれるのも嬉しかったです。原作だと南極行ったばっかりにアレなことになりますからね。デザインがより水生生物っぽくなったエイブラハム・サピエンも、原作より活躍してたんじゃないだろうか。泳ぐ姿がそれっぽい。そしてなんといってもリズ・シャーマンですよ。原作から大好きだったけど、映画版もたまらんですね。暗い目のお姉さんバンザーイ(バカの聖痕を燦然と輝かせつつ)。マイヤーズ、おまえは頑張ったよ。ラストシーンのいい面の皮っぷりたるや、同じボンクラとして同情と笑いを禁じ得ない!*1
 映画としての欠点の一つは、悪役のモチベーションが弱いってことで、ラスプーチンの再現度の高さを考えるともったいないです。かっこいいんだけどなー。イルザもハンマーで人を殴る直球さ*2で印象に残ります。クロエネンのメッタ刺しもスゲーと思ったけど。あのナチ二人は人殺し感があってよかった。
 それにしてもクロエネンの超人病はいったいどうしたことでしょう。原作だと一人称が「僕」の、ちょっとトータルエンクロージャー好きなだけのマッドな理系メガネ君だったのに、映画になった途端ヘルレイザーというかジョルジュ・黄じみた、いい気になったバトルクリーチャーに。やっぱり二瓶勉がデザインしたあたりからおかしくなったのか、と思っていたら、『ブレイド2』でも「つるっとした人がカンカンカンカン(チャンバラ音)」ってシーンがあったよね、という指摘を受けて腑に落ちました。そうかそうかギレルモ。おまえの仕業か。このキャラクターに対する監督の思い入れはかなり強いようで、原作を独自に掘り下げまくり。解剖シーンは痺れたね。このハッタリの感触に我々は覚えがあるッ!と思って考えた結果、ようやくわかりました。菊地秀行だ! ほら、遺体の背骨が木に変わってたとか、ああいうやつ(ジェスチャー)。菊地世界で産湯を使った人間にとっては非常に居心地のいい映画でした。
 原作の民話っぽさはロシアに行ってからちょっと回収してましたけど、もう少し欲しかったかな。続編撮るなら是非バーバ・ヤーガを。それで鴉とか! 熊とか! 喋るの!!(鼻血)
 原作といえば、クライマックスが淡々としてるのはまさに原作どおりで、個人的にはかえって好感度上がったんだけど(笑)。いつもあんなもんじゃん、ヘルボーイって。攻撃しながら「Son of a...」って言いかけてAGH!とか吹っ飛ばされて、気絶してる間に何もかも終わってたりするし、殴る擬音はPOK POKとかいって緊張感ないし、そう考えるとすごい原作の精神に忠実な映画ですよこれは。もう一回ぐらい観てもいいな。

*1:ついでに言うと、リズはサピエンとお似合いだと思う。水槽のガラス越しのシーン大好き。

*2:唐沢なをきの漫画なみに容赦なく殴る。