ピッチブラック ASIN:B0001CSB7G

walkeri2004-07-22

 昨日もちょっと引用したけど、今度公開される『リディック』の前作『ピッチブラック』はB級SFの佳作なのでこの機会にお勧めしておきます。
 太陽が三つある惑星に、凶悪犯リディックを護送中の恒星船が不時着。折悪くちょうど皆既日食が来て、暗闇で活動するシュモクザメに似たたちの悪い肉食生物が巣穴から飛び出してくるのでさあ大変。という、話だけ聞いたら「ああ、『エイリアン』のパクリね」で済まされちゃいそうなストーリーですが、これが実に渋い、SF心をくすぐる演出に満ち溢れた傑作なのです。しょっぱなの不時着からして素晴らしい。宇宙船が惑星状にハードランディングしたらどうなるか、というのを真正面から絵で見せてくれます。まず止まらない。ものすごい速度で落ちてきているので、タッチダウンしても勢いがほとんど殺されず、船体バキバキ壊しながら、時速数百キロで地表を滑走していくんです。映画館で観てて、このシーンだけで来てよかったと思ったぐらい。他にも丘の向こうに見える「木」、照明の音声スイッチが「ないこと」、リディックのサイバーアイに映る、肉食生物の大群のまがまがしい美しさ(『虎よ! 虎よ!』のニューヨーク核爆撃シーンを思い出した)、滑空して着地する怪物たちの滑らかな動き、音もなく近寄ってすぐそこにいる恐ろしさ、圧倒的な質量の闇に対して、ほんのわずかな明かりで立ち向かう人間たちの必死さ、登場人物の情がリアリズムに勝たない演出など、ぞくぞくする要素がこれでもかと詰め込まれた映画です。これは作るの楽しかったろうなー、と思いましたよ。低予算なりに考えて、工夫して、定型的なフォーマットの中で精一杯頑張って面白くしてるのが伝わってきます。
 『リディック』も面白いといいなあ。『ピッチブラック』があまりに気に入ったせいで、期待しすぎて危険です。落ち着こう。