「鬼札」の図案について

walkeri2004-06-26

 うたげさんがid:enmotakenawa:20040623、id:enmotakenawa:20040625で書かれている「鬼札」(11月のカス札、雨札)ですが、家に帰って資料を引っ張り出してみました。構造人類学者の北沢方邦による『歳時記のコスモロジー』(ISBN:4582702163)が求める本でした。この本では、件の札を以下のように解いています。

  • 赤は火の象徴であり、ここでは雷神の火の赤。
  • 黒は闇の色、地下の色、大雨をもたらす黒雲の色である。
  • またこの黒は、限りなく濃い青(=大雨の水の青)でもある。
  • ここに見られる火の赤と水の青の対立構図は、赤タン青タンという形でも花札の中に繰り返し現れている。

 札の中に散乱しているものについては、こうです。

  • 女の笠や比礼(裁縫コードに置き換えたヲロチの象徴)
  • 琵琶または琴(雷神の妻である弁財天の持ち物)
  • 牛車の車輪(雨脚の太いことをいう「車軸を流す」という表現からの連想)

 で、この札と対になるのが12月の「桐に鳳凰」の札。

 という二つの札のなかに、太陽アマテラス天の鳥と、根の国の支配者スサノヲ地のヲロチという、天と地の対立と均衡、そして霊力の交換という日本のコスモロジーが姿をあらわしているわけです。

 思わず圧倒されるような怒涛の解釈ですが、少なくとも、この札に雨と雷の象徴がものすごく圧縮された形で詰まっていることは確かなようです。転がっているよくわからない丸いものは牛車の車輪で、同時に笠で、雷太鼓でもあるのかな。琵琶がどこにあるのかは全然わからない(笑)。画面上にある爪については触れられてなかったけど、雷シギという解釈はきれいで面白いですね。
 こんな風に、花札のセットにも日本人の神話的宇宙観が凝縮されているんだよ、というのが著者の主張で、なかなか刺激的です。以上、報告おわり。
 お、任天堂花札についてのインタビュー発見。