図書館妃(としょかんひめ)

 コミティアに行くといつも買っている舞村そうじさんの新刊同人誌。ワールブルグ小公国の「図書館城」に嫁いできたショコラタ姫と、夫であり図書館城の領主であるルシル・クラウス・パッヘルベル・ディ・リキニウス、図書館の司書たち、そして本を探して城を訪れる人々のお話です。世に図書館萌えの作品はたくさんありますが、司書のリファレンス業務に注目している点でこの作品は少々ユニークといえます。図書館という場所に対するフェティッシュ的な描写こそありませんが、それぞれに目的をもった人々が忙しく行き交うこの図書館は、生き生きとして魅力的です。四話構成、70ページ強の短い物語ですが、これで終わらせるのはもったいない! ショコラタ姫はこう言います。「すごくって、すごくってよ、本がこんなに」「これからここで暮らせるなんて夢みたいだわ」――何度生まれ変わっても読みきれないほどの蔵書を誇る、古く巨大な図書館城で暮らすなんて、これ以上の素晴らしいファンタジーがあるでしょうか!
 ストーリーでは、戦争を巡る非常にシリアスな話である「冬の章」にも心を動かされましたが、小説家を志す若者がボッコボコにされる「秋の章」が特に身に沁みました。ははははははー。キャラクターだと姫のおつきのコォマとコゥマの二人がお気に入り。あと山村暮鳥は読んでみようと思いました。